理事長挨拶
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理事長挨拶
薬局DX推進コンソーシアムが目指すもの
「薬局DX推進コンソーシアム」は、いわゆる「調剤業務の一部外部委託」について、国家戦略特区事業として提案するために、令和5年6月に任意団体として結成されました。
本コンソーシアムは、今回の特区事業を行う大阪府下で薬局事業を行う法人からなる正会員と、薬局関連事業を手がける法人からなる準会員で構成されていますが、結成から半年、「調剤業務の一部外部委託」という大きなテーマについて、安全性、有効性、経済性について最適な形はどうあるべきかということを考え、検証するための活動を行って参りました。
通常は、ライバル企業と考えられる法人同士が、それぞれの所属の垣根を越えて、前向きかつお互いへの配慮が十分に感じられる雰囲気の中で、このような活動を行えてきていること、また、今回の特区提案については、本コンソーシアム単独ではなく、大阪市・大阪府との共同提案となっており、まだまだ検討が進んでいる状況ではありますが、その実現に向けて少しずつ進んでいることを実感しています。
そもそも、処方箋を応需した薬局が、その調剤業務を自薬局内で完結させることは、医薬品医療機器等法施行規則第11条の8,および11で定められている事項です。よって、その前提が揺らぐことは、現在の薬局ビジネスのあり方を大きく変える可能性があるばかりでなく、医薬品供給体制にも大きな変化が起こる可能性があり、国民への安全な医療提供体制が脅かされるのではないかという危惧から、業界内からは大きな懸念が寄せられています。
にもかかわらず、本コンソーシアムでの活動をきっかけに、事態が少しずつではありますが、着実に前進しつつあることは、代表の私からしても、少なからず不思議な感じがします。ただ、その理由をあえて考えると、以下の2点ではないかと思います。
1つは、大義があることです。
「調剤業務の一部外部委託」は、2015年に厚生労働省から示された「患者のための薬局ビジョン」に記された「対物から対人」を実現するために、対人業務充実に向けた対物業務の効率化が大事であることから、その一手段として示されているものです。単なる効率化が目的なのではなく、ポリファーマシーや残薬という社会課題を解決するためには、薬剤師の対人業務の充実が必要であり、その実現には、対物業務の効率化は不可欠です。
対物業務の効率化には、業務フローの見直しと整理、積極的な機械化とICT化をベースにして浮き彫りになってくる「業務的には重要だが薬学的専門性がない」業務を担う薬剤師ではない人材を育成し現場に投入していくことが必要です。ただ、年商10億円以下の小規模の薬局運営法人が圧倒的多数を占めるなかで、このようなドラスティックな改変をスムースに行うことは困難です。
そこで、規模の大小を問わず、薬局が対物業務の効率化を通して、対人業務を充実させ、ポリファーマシーや残薬の問題を解消していけるための手段の一つとして、今回の「調剤業務の一部外部委託」というテーマがあるというのが、提案当初からの私たちの一貫した考えです。このようないわば「大義」があることが、本コンソーシアムの成り立ちや経緯に大きな影響を及ぼしていると思います。
そして、もう1つは、今の現行法律がどうなることを回避するために定められているのかという、いわば法律の趣旨について考えてきたことです。現行法規では、前述のごとく、薬局開設者に「その薬局で調剤に従事する薬剤師でないもの」に調剤させてはならないことや、調剤の求めがあった場合に「その薬局で調剤する薬剤師」に「その薬局」で調剤させることを定めています。
今回の提案では、この法律から外れることになりますが、決して、無謀なことや患者さんを危険にさらすことをやろうとしているのではありません。ただ、この法律が防ぎたいことは何かというそもそもの趣旨を考えると、それは、やはり正しく調剤ができなかったり、医薬品の品質が変化したりして、結果的に患者さんに正しく安全な薬物治療が行えるようになってしまうことのはずです。
だとすれば、それらをきちんと担保した形であれば、調剤業務の一部を、処方箋を応需した薬局ではないところに委託することも、あり得るのではないかと考えたことが、今回の提案に至ったもう一つの理由です。
医薬分業制度が導入されて50年目を迎える2024年に、「医療安全の確保」「医薬品の適正使用」という薬剤師が果たすべき役割をきちんと果たすためには、対物業務の効率化を通じた対人業務の充実が不可欠です。本コンソーシアムでの活動を通じて、そのための小さな、でも、確実な変化に向けた一歩を踏み出せるように、総力を結集して努力して参りたいと考えています。
私たちの成果について、本サイトでも、適宜ご紹介いたしますので、是非、ご覧いただければ幸いです。
2024年1月
薬局DX推進コンソーシアム
理事長
狭間研至
理事長プロフィール
狭間 研至
昭和44年 大阪生まれ
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長
PHB Design株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長
一般社団法人 薬剤師あゆみの会 理事長
医療法人 嘉健会 思温病院 理事長・院長
北海道医療大学 客員教授
就実大学 特任教授
医師、医学博士、日本医師会産業医